〜よっしぃの独り言                   医者として10年程仕事をしてきました。 医療関係者と一般の方々の間に大きな隔たりがある事も実感しました。 これは、お互いにとって不幸なことです。 このすきまに橋を架けれたらと思いブログを始めました。
2008/11/18 Tue 12:54
m3のブログに去年の9月15日にエントリーした記事です。




もう、ずいぶん前のことです。

今回もUさんの話ですが最終回です。

Uさんは、そうあのUさんです。残念ながらイレッサも効果がなくなりました。

両肺に多発性の転移を認めて、酸素を吸わないと日常生活が送れないようになってきました。
残された時間を想像してみたのですが、1から3ヵ月くらいでしょうか?

そんなUさんに、毎年楽しみにしている事がありました。
同窓会だそうです。

毎年10月に行われる地元での同窓会、よく話しを聞いてみると
『わしが行かなはじまらへん。わしがおらんかったら盛り上がらない。』
と同窓会にどうしても参加したいようです。あと、3ヵ月先です。

Uさんの地元は飛行機で2時間、車や電車では半日はかかるところです。

酸素を吸入しており飛行機での移動は難しそうです。電車も酸素ボンベのことを考えると難しそうです。
ベターなのは酸素ボンベを車に何本か積んでの移動が一番確実です。しかし、Uさんの病状的に参加するのは難しそうです。

いろいろと作戦を立てて手をつくしたのですが、Uさんの病状が進行し外出するのもしんどい状態となってきました。

ご家族の方と相談しましたが、同窓会は断念した方がいいとの結論になりました。

『Uさん、今の病状では同窓会は行かれへんわ。もう少し、調子よかったらええんやけど。』
『わしが行かな、はじまらんのやわ。』
同窓会の10日前の会話でした。

それから、1週間後、Uさんは、旅立ちました。

地元の同窓会にきっと参加されてたことでしょう。

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Uさんのご冥福お祈り申し上げます。
また、Uさんのおかげで多くの入院患者さんが明るく過ごせましたことをお礼申し上げます。





テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

2008/11/16 Sun 12:19
m3に去年の9月14日エントリーした記事です。



もう、ずいぶん前のことです。

Uさんは、そう頭にガムテープを巻いたことのあるUさんです。
Uさんは、イレッサを始めることとなりました。

期待される効果、副作用について説明を行い『では、明日から始めましょうか。』と会話は終了しました。

あとで、ナースがUさんの部屋へ行き話しを聞いてみると
『わしな、明日からな、新しい薬飲むんや。何やったかな、エ、エ、エー、エリサベスやったかな。』

ナースに『イレッサやから、Uさん』とつっこまれながらイレッサを開始しました。

ちなみに、私は『イレッサ→エレッサ→?→エリザベス』と変化したのではと分析しましたが、いかがでしょうか。

それでも、ことあるごとに『エリザベス、エリザベス』とおっしゃっていました。

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つづく




大物でした。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

2008/11/14 Fri 11:55
m3のブログに去年の9月5日にエントリーした記事です。




もう、ずいぶん前のことです。

Uさんは、60後半の男性です。
肺癌であることがわかり、抗癌剤治療を行っていました。

抗癌剤治療を開始して2週間ほど経つと髪の毛が抜け出します。(抗癌剤の種類にもよります。個人差もあります。抗癌剤治療終了後2、3ヵ月で生えてきます。)

Uさんも治療開始後2週間ほど経ち、髪の毛が抜けてきました。短く散髪していたのですが、Uさんには、今まで経験したことのない抜け毛が気になって仕方ありませんでした。

担当ナースが対処法を教えていました。枕やシーツについた抜け毛をガムテープで取り除くごく一般的な方法です。

それを聞いてUさんは、ひらめきました。

『これだ!』

Uさんは、ひらめいたままを行動にうつしました。
しばらくして、Uさんのベットから声が聞こえてきます。

『痛、痛、痛っ』

ナースがUさんの元へ向かうと
『Uさん、何やってんの?』

なんと、Uさんは、ガムテープを自分の頭にミイラのようにぐるぐる巻きにしていたのでした。そして、ガムテープをとろうとして、、、、、、

確かに、ガムテープで掃除の頻度は減ったんですけど、だいぶ痛かったみたいですね。

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もう、2度としないそうです。マネしないでくださいね。



しばらく、病棟中の話題でした。
後にも、先にも、そんな事したのはUさん以外見たことありません。



たまには、楽しい人生いろいろでした。




楽しい入院生活、続きがありますからね。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

2008/11/12 Wed 12:08
もう、ずいぶん前のことです。

Oさんは、肺がんの末期の状態でした。

食欲もなくなり、日中はほとんどベットの上で過ごしています。

全身倦怠感が強いようです。

ご家族の方にあと1ヵ月持つか持たないかわかりません。と説明しました。

それからお姉さんは、毎日病院に来るようになりました。
いろいろ身の回りのことなどをしてくれます。
Oさんにとってもお姉さんがいることは心強いようです。

ある日、Oさんの病室を訪れるとお姉さんがOさんに
『もう、死にかけてるくせに、、、、、、、』
と言ってるではないですか。

私は、ビックリしてお姉さんの顔をのぞき込みました。
お姉さんは、意に介することもなく続けます。

『片足、棺桶に突っ込んでるから、、、、、』

などとOさんの前で言っています。
 
 
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それから、別の部屋でお姉さんと話しをしました。

お姉さんは、涙ながらに話しを始めました。

『昔から、何でも言いたいことは言う関係やったんです。
私もつらい、出来たらあんな事言いたくはない。

でも、先生もう治る見込みはないんでしょ。
しかも、もう本当に先が見えてるんでしょ。

そしたら、少しでも残された時間が短いことをわかってもらわなあかん。
わからしとかな、あの子が可哀想やと思います。
だから、心を鬼にしてあんな事言いますねん。』


そんな事があってから1週間ほどしてOさんは、眠るように逝かれました。

自分の残された時間をわかっていたかのように。



そして、お姉さんは、号泣していました
2008/11/10 Mon 13:08
m3に去年の7月21日エントリーした記事です。





もう、ずいぶん前のことです。

高齢であるLさんは、今まで治療を頑張ってきましたが、残念ながら右に胸水がたまってきてしまいました。

呼吸困難の症状が出現したため、左の胸腔にトロッカー(水を抜く管)を入れました。癌性胸膜炎(がんにより胸水が出てきた状態)でした。

徐々に食欲も落ちてきており、全身倦怠感も出現してきました。
Lさんの残された時間はあと1週間程度と迫っているように思われました。

予後が、もう少し見込める(もう少し元気な)方ならトロッカーを通して胸膜癒着剤(水をたまりにくくする薬)を入れるのですが、この時点でLさんに胸膜癒着を行える体力はないと判断しました。

管を入れたまま様子を見ておりました。

ご家族の方には病状を説明し、予後1週間は見込めない可能性が高い事。場合によっては今日、明日お亡くなりになっても不思議ではないと言う話をしておりました。

また、もしもの時は、人工呼吸器(口から管を入れて強制的に酸素交換をさせる医療機器)を使用しない事や、心臓マッサージなども行わず自然経過にまかせる事をご家族の方も希望されておりました。

その日は、朝ご飯も少しですが手をつけていらっしゃいました。

お昼前の事です。

朝から、ベットのそばに付き添っていた娘さんの叫び声がしました。

『先生、何とかして!』

たまたま、病棟にいた私は、Lさんの部屋に行きました。

『さっきまで、しゃべってたのに、急に。。。。』

聴診器をあててみます。心音、呼吸音ともにきこえません。

心電図モニターをつけてみてもやはり、フラット(心臓が動いてない状態)です。

そのことを娘さんに告げると泣き叫びながら『何とかしてください。』
『ほんとうにいいんですね。』と娘さんに確認して心臓マッサージと強心剤、そして、アンビューにて酸素交換の補助を行いました。

処置を続けていると、心拍が再開して、自発呼吸も出てきました。

意識も戻りました。

娘さんは安堵の表情を浮かべられました。

 
 
 
夕方、娘さんがうかない顔をしてやってきました。

『先生、あのときあんな事言うんじゃなかったんじゃないかと後悔してるんです。あの時は、心の底から今死んじゃイヤと思ったんですけど。しばらくすると、しんどそうにしている母の顔を見るのがつらくなってきたんです。前から、自然の成り行きにまかせると決めてたのに。あのとき、私があんなこと言わなければ。母がもう苦しまなくてよかったんですから。。。』

『あなたは、あの時心の底からそう思ったんですよね。Lさんは、そのあと息子さんやお孫さんとも会えたんですよね。Lさんもよかったと思ってますよ。』

その翌日、Lさんは永眠されました。






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以下コメントです。

よっしぃ先生、こんばんは。質問です。
がんによるこのような病状でお亡くなりになる場合、人工呼吸器を装着すると、いわゆる植物状態で生き長らえる可能性はあるのでしょうか?
written by christmas / 2007.07.21 20:16

娘さんが後悔された気持ちも少しわかる気がしましたが、
私もLさんは皆に最後のお別れができた事を良かったと思っていると思います。
それに、家族が挿管されている姿を見るのはもっとつらいですが、それがなかっただけでも、Lさんにとってもご家族にとっても、良い最後となったのではないでしょうか?
written by chikorui / 2007.07.21 23:56

 一時的処置だけで意識が戻って家族と意思疎通出来たのですから・・・私も、結果としては良かったんじゃないかと思います。
 もし自発呼吸が戻らずに(そして、娘さんの救命希望も変更されずに)挿管までしなくてはならない展開になってしまっていたら、御本人も御家族もつらい展開だったと思いますから。
 おつかれさまです。
written by ぺがさす / 2007.07.22 00:46

自然に任せるという取り決めを事前にしていても、いざ目の前で急変すると「何とかして」と言ってしまうご家族のお気持ちはよくわかります。ここで医師が家族の求めに応じなければ、「冷たい医者」と恨まれるでしょう。
この場合は意識が戻ってご家族と最期のお別れができてよかったと思います。
ぺがさす先生のおっしゃるように人工呼吸器がつけられて苦しみが長引いてしまったらご本人もご家族も辛いです。誰より「何とかして」と言ってしまったご家族が後悔に苦しむことになるのですよね・・。そんなことを感じました。
written by 春野ことり / 2007.07.22 06:16

christmasさん
おそらく、長くは生きられないと思います。挿管して人工呼吸器を装着してもなにも処置をしたと言う事実が残るだけの可能性もあるともいます。
延命できてもLさんの場合はおそらく数日から1週間でしょう。
そのために、口から管が入ったままの状態はあまりにも人間的でない状態じゃないかと個人的には思います。

chikoruiさん、ぺがさす先生
LさんとLさんのご家族にとってはよかったと思います。特に、挿管しなくてすんだんですから。
しかし、似たような状況というのは日本中探せばあると思います。
そのような場合、何がよりよい選択となりうるのか考えたい、いい選択をしたい、と思います。できれば、みなさんにもその状況でどんな事をするのがよりいいのか考えて頂きたく存じます。
答えは、個人個人、家族家族異なると思います。

春野ことり先生
事前にご家族と取り決めをしていても、取り決めの話をしたときの状況での決定です。ご家族は、徐々に悪くなり急に止まってしまうという認識は無かったので、『何とかして』との叫びにつながったと思います。
このような状況になる可能性は私を含めてみなさんあると思います。みなさん(特に医療関係者以外)が、少しでもこのような状況になったときに
あわてないように、少しでも考えて頂きたいと思います。

みなさん、コメントありがとうございました。
written by よっしぃ / 2007.07.22 11:35

春野ことり先生へ
 こんにちは。私は、自然に任せるという取り決めを事前にしていても、いざ目の前で急変すると「何とかして」と言ってしまいそうな一人です。
 患者が亡くなれば、やりきれない気持ちを一時的に医師へぶつける家族はいるでしょう。しかしそこから更に経験を重ねると、「あの時の医師の治療は正しかった」になることも多いでしょうか。深い悲しみから成長するのが人間だと思いますので。ただし時間はうんとかかりますね(苦笑)。
 「冷たい医者」のレッテルを貼る時は、おそらくそれまでの医師の治療姿勢に起因するような気がします。もちろん、「荒れる患者・家族」というのも逆方向からの重要なファクターだと思いますが(^^;)。
written by christmas / 2007.07.22 13:38

christmasuさん、私へのコメントありがとうございます。おっしゃる通りですね。やりきれない気持ちを医療者にぶつける人が増えているんです。明らかに。
時間が経って「あの時の医師の治療は正しかった」と思って頂けたとしても、それを医師は知るすべがありませんので、医師はただ患者家族の一時的、一方的な怒りを受けたままになってしまうのです。なるべくならそういうことは医師としても避けたいわけで、そうすると、患者自身のことよりも、自分の保身のために家族の意志を尊重するしかない。今の日本の医療はそんなところですかね・・・。
>「冷たい医者」のレッテルを貼る時は、おそらくそれまでの医師の治療姿勢に起因する
そう言っていただけると何だか安心しますが、現実にはそれまで全く話も聞きに来ず、医師の治療姿勢を見ることもなく、臨終のときだけ現れて「荒れる家族」もいるわけです。もちろんこういう人はごく一部ですがね・・。
家族の死は誰にとっても辛いものですが、辛さを乗り越えて人間は成長するのですね。同感です。
written by 春野ことり / 2007.07.24 23:11

春野ことり先生、再びこんにちは。
〉時間が経って「あの時の医師の治療は正しかった」と思って頂けたとしても、それを医師は知るすべがありません
本当にそうですね、患者家族側の総括を聞く医師は稀ですね。ですので、
〉患者自身のことよりも、自分の保身のために家族の意志を尊重するしかない。
で必要十分な対応だと感じます。女子高生の検診の意味のところでよっしぃ先生がコメントされましたが、現代人はくっだらないことでも自己主張する人としない人と、両極端になってきています。医師が両方向の患者に十分配慮をするのは無理、それ以上踏み込むのなら、担当の患者数を大幅に減らす必要性が生じそうです、非現実的です(^^;)。

〉臨終のときだけ現れて「荒れる家族」もいるわけです。もちろんこういう人はごく一部ですがね・・。
いますねー!こういう人は、後の遺産相続で最も自己主張します。彼らの親しい人も同じトーンだし、周囲の人はそれを知っている。春野先生、脳内スルーでOKですよ(笑)。周りは皆、生暖かい目で見守っていますから(爆)。
written by christmas / 2007.07.25 13:57


なお、このエントリーには、続きがあります。

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