~よっしぃの独り言                   医者として10年程仕事をしてきました。 医療関係者と一般の方々の間に大きな隔たりがある事も実感しました。 これは、お互いにとって不幸なことです。 このすきまに橋を架けれたらと思いブログを始めました。
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2008/12/09 Tue 11:44
もう、ずいぶん前のことです。

Nさんは、がんの末期で残された時間はほとんどない状態でした。

一般的な、末期の患者さんと少し違う点があるとするならばNさんは、まだ30代だったと言うことです。

Nさんは、今まで抗がん剤や放射線治療を行ってきたのですが、もう、Nさんにこれ以上の積極的な治療に耐えうる体力はない状態となっていました。

Nさんの苦痛は、かなり強いものとなっていました。
Nさんも苦痛はなるべく取り除いて欲しい。鎮静にも同意されています。

あとは、家族のセデーション(鎮静)への理解だけです。

ご家族に説明をするために時間の約束をしました。

約束の時間に、母親、弟が診察室に入ってきました。
少し遅れて、妻が、

そして、そのあとに小学生の娘(10歳)が入ってきました。

正直、ビックリしました。

今まで、中学生が一緒に説明を聞きに入っていたことはありましたが、小学生は初めてです。

しかも、かなりの心に深い傷を負うかも知れません。

あとで、確認するとどうしても話しを一緒に聞きたいと娘さんが希望したらしいのです。

ご家族の方に
Nさんは、がんの末期であり回復する見込みのないこと。
残された時間は、おそらくあと数日から1週間程度であること。
今まで、いろいろ手をつくしたけれども、全身倦怠感や身のおきどころのなさを取り除けなかった。
取り除くためには、セデーション(鎮静)しかないと考えられる事。
セデーションを開始したら、Nさんと話しなど出来なくなる可能性が高いという事。
などを説明しました。

一通り説明が終わりました。

母親の目からも妻の目からも娘の目からも涙があふれています。

『じゃあ、眠たくなるような薬を使い始めていいですね。』

『先生、その方向でお願いします。』

と妻が言った瞬間。

今まで毅然とした態度の娘は、「えっ」と驚いたような顔で母親(妻)の顔をのぞき込んで、そして、大声で泣き始めました。
 
 
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大好きなお父さん。
もうすぐ、永遠の眠りにつくことは理解しているでしょう。

だから、少しでも長く話しがしたい。
でも、すごくしんどそうなお父さん。

少しでも、起きておいて欲しい。
お母さんもそう言ってくれると思っていたのに。
 
 

彼女が心に受けた傷はどんなものなのでしょう。
彼女の心のケアまで、手が回りませんでした。

決して忘れることのできない出来事でした。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

コメント
この記事へのコメント
子供には酷ですね。
兄も30代で末期癌で亡くなりました。
息子は小6でした。
火葬場で荼毘にふしてる間、親族が待機している場所から笑い声が
聞こえてきました。

息子は母親に泣きながら訴えていました。
「お父さんが死んじゃったのに、皆は笑ってる」って・・・・・。
大人に対する不信感でしょうか。
2008/04/27(日) 18:29:18
URL | ガーネット #0ll.HrS2[ 編集 ]
子供の世界は狭いですから。
特に父親がとなるとかなりの部分でしょうからね。
10年たつと理解できるのではないでしょうか?
2008/04/27(日) 21:41:10
URL | よっしぃ #shRt6jX2[ 編集 ]
自分の体験も踏まえ―…
私は、子供が小さかったとしても、重要な説明の場合、同席したほうがいいと考えていたりします。重さを感じてもらいたいのもありますが…
私自身、幼少に父を突然死で亡くしています。未だにに鮮明に思い出せますが、

『あの時…』

と思うばかりのものと、後悔がただただあるだけなのです。あのような思いはしてもらいたくない。そう思うため、自分の経験も話し、理解してもらった上で、家族の一人として同席してもらっています。
特に、自分が父を亡くした9才という年齢でも、きちんとした把握は出来るため、その年代の子が居てしまうと、ケアに力が入ってしまうのは…悪い癖になっていますが。

このケースの場合も、聞いてもらって良かったのではないかと…。本人なりにも気持ちの整理がつきますしね。
2008/04/28(月) 09:33:44
URL | あゆぱん #hLzpGkQo[ 編集 ]
そうですね。実体験があるのであれば、その様な対応になるのかも知れません。

私の場合、小学生が入る病状説明の経験は初めてであったこともあり、かなり緊張しました。

確かに、後々になると聞いててよかったと思えるのではないでしょうかね。
2008/04/28(月) 11:56:38
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
十歳
こんにちは。遅レスで、すみません。我が娘も今、十歳で、今度、学校の授業で、『二分の一成人式』というのを参観日に受けます。子から親へ、また親も子へ手紙を書き、メッセージを送ります。

さて、十歳で、親の死を受け止める… かなりな事でしょうね。けれど、何も知らされずに居るよりは、後々良い結果となるのでは…

良い結果になったと願いたい、お話ですね……
2008/12/09(火) 14:10:13
URL | 虹 #-[ 編集 ]
I'm sure of it!
私も大人になってですが両親を比較的若く亡くし、死にはやはり心痛み傷ついております。
けれど、親の死をきちんとシェアして傷つくのも人間の大切な経験だと思っております。

よっしぃ先生は彼女に、大切な心の弾力と誇りをプレゼントして差し上げましたね。
小さな彼女の力をよっしぃ先生が信頼し、同席させて差し上げた事を彼女は大切にして成長されていると思います。

よっしぃ先生もどうかご自身を誇って下さい…!
2008/12/09(火) 21:33:54
URL | エビ #XbnZBJT2[ 編集 ]
残される家族の介護
私の場合は旦那しか本当の事は話してません。本当はそれすら話したくなかった

でも、先日長男には話しました。余命についてまでは少しだけ。二男には話してません・・・
その時、28になる長男に「聞いてなく突然悪くなったって言われても受け止められない」って言われてしまいました
28になってもこういう反応ですから、小さい子供さんには理解は無理だったんでしょう
聞いていたとしてもまだまだ親がいなくなるってことは考えられない世界でしょう

後悔しない。って言葉は患者本人より残される家族の為にあるように思います。だから現実を受け止めて彼女なりに精一杯父親への愛情を注ぐことができたと思いますよ

息子は母である私が後悔しないで治療が受けられたらそれが一番。って言ってくれますから楽です。
2008/12/09(火) 22:10:46
URL | ran #LA1CAGAE[ 編集 ]
虹さん
>良い結果になったと願いたい
本当にそう思います。
子供の心理のわかる専門家がそばにいてくれたらと本当に思いました。

エビさん
>親の死をきちんとシェアして傷つくのも人間の大切な経験だと思っております。

エビさんも大変な経験をされて、それを糧に成長されてきたのですね。

>小さな彼女の力をよっしぃ先生が信頼し、同席させて差し上げた事を彼女は大切にして成長されていると思います。

そんなかっこいいものではなくて、同席していいか?と聞かれ、拒否する理由もないし同席してもらったというのが事実です。

あの場面、思いだしても泣けてきますね。

2008/12/09(火) 22:11:01
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
ranさん
>「聞いてなく突然悪くなったって言われても受け止められない」

普通の反応だと思います。
患者さん自身も、そして家族の方にも考える時間を持って欲しい。強くそう思います。

>後悔しない。って言葉は患者本人より残される家族の為にあるように思います。

確かにそうですね。
家族は出来るだけのことを何でもいいからしたいと考える事が多いようです。
しすぎるのも、患者さん自身を苦しくする場合もあると考えています。
難しいですね。

やっぱり、小さい子供には厳しいと思います。

2008/12/09(火) 22:17:21
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
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