~よっしぃの独り言                   医者として10年程仕事をしてきました。 医療関係者と一般の方々の間に大きな隔たりがある事も実感しました。 これは、お互いにとって不幸なことです。 このすきまに橋を架けれたらと思いブログを始めました。
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感染症に対する心得 
2009/05/02 Sat 11:10
CATEGORY【診療】
メーリングリストで感染症で有名な岩田先生が書かれたとある文章が回ってきました。

タイトルには、『豚インフルについて、研修医の皆さんへ』とあります。

岩田先生は、亀田総合病院総合診療・感染症科部長から神戸大学教授になられた先生です。

感染症の分野では、とてもとても有名な先生です。

ですので、文章に目を通しました。

いいことがたくさん書いています。

医者の心得のようなことも書かれています。

感染症の大家でもこわくてこわくて嫌で嫌で仕方がなかったとまで自身の気持ちを述べられています。

メールの始めに転載OKと書かれていたのですが、さすがにブログ上での公開はまずいかな。

なんて考えていたのですが、ケアネットコムに掲載されていましたのでここでも全文転載します。

研修医だけでなく、医者も看護師も薬剤師もその他医療関係者も、一般の方も、海外に行く方も、巣ごもりする方も一度読んでみてください。

非常にためになります。




豚インフルについて、研修医の皆さんへ
-神戸大学 岩田健太郎先生より

神戸大学感染症内科の岩田健太郎先生より、今回の豚インフルエンザに関して、ご自身が2001年の炭疽菌騒ぎの際にNYで2004年には北京でSARSに関わった医者として研修医の皆さんに流された提案を先生のご好意により掲載させていただきました。
 
豚インフルについて、研修医の皆さんへ
 
まず、毎日の診療を大切にしてください。呼吸器症状の有無を確認し、ないときに安易に「上気道炎」と診断せず、旅行歴、シックコンタクト、動物暴露歴など問診を充分に聴取してください。患者さんが言わない、ということはその事実がない、という意味ではありません。せきをしていますか?と聞かなければ、せきをしているとは言わないかも知れません。原因不明の発熱であれば、必ず血液培養を検討してください。バイタルサインを大切にしてください。バイタルサインの重要度は重要な順番に、血圧、脈拍、呼吸数、(第五のバイタル)酸素飽和度、そして、体温です。極端な低体温などはまずいですが、発熱患者で大切なのは体温「以外」のバイタルサインと意識状態であることは認識してください。発症のオンセット、潜伏期など、時間の感覚には鋭敏になってください。要するに、ブタインフルエンザ診療のポイントは普段の診療の延長線上にしかありません。ほとんど特別なものはないことを理解してください。上記の診療は診療所、大学病院、どこのセッティングでも可能です。大抵の感染症診療は、大抵のセッティングで可能なのです。
 
自分の身を護ってください。とくに初診患者では外科用マスクの着用をお奨めします。患者の診察前とあとで、ちゃんと手を洗っていますか。呼吸器検体を採取するなら採痰ブースが理想的ですが、理想的な環境がないからといって嘆く必要は少しもありません。「うちには○○がない」と何百万遍となえても嘆いても、物事は一つも前に進みません。「うちには○○がないので、代わりに何が出来るだろう」と考えてください。考えても思いつかなかったら、そこで思考停止に陥るのではなく、分かっていそうな上の先生に相談してください。いつだって相談することは大切なのです。診察室で痰を採取するなら、部屋の外に出て患者さんだけにしてあげるのもいいかもしれません。日常診療でも、とくに女性の患者は人前で痰なんて出せないものです。呼吸器検体を扱うとき、気管内挿管時などはゴーグル、マスク(できればN95)、ガウン、手袋が必要です。採血時やラインを取るときも手袋をしたほうがよいでしょう。こういうことは豚インフルに関わらず、ほとんどすべての患者さんに通用する策に過ぎません。繰り返しますが、日常診療をまっとうにやることが最強の豚インフル対策です。
 
あなたが不安に思っているときは、それ以上に周りはもっと不安かも知れません。自分の不安は5秒間だけ棚上げにして、まずは周りの不安に対応してあげてください。豚インフルのリスクは、少なくとも僕たちが今知っている限り、かつて遭遇した感染症のリスクをむちゃくちゃに逸脱しているわけではありません。北京にいたときは、在住日本人がSARSのリスクにおののいてパニックに陥りましたが、実際にはそれよりもはるかに死亡者の多かった交通事故には全く無頓着でした。ぼくたちはリスクをまっとうに見つめる訓練を受けておらず、しばしばリスクを歪めて捕らえてしまいます。普段の診療をちゃんとやっているのなら、豚インフルのリスクに不安を感じるのはいいとしても、パニックになる必要はありません。
 
今分かっていることでベストを尽くしてください。分からないことはたくさんあります。なぜメキシコ?なぜメキシコでは死亡率が高いの?これからパンデミックになるの?分かりません。今、世界のどの専門家に訊いても分かりません。時間と気分に余裕のあるときにはこのような疑問に思考をめぐらせるのも楽しい知的遊戯ですが、現場でどがちゃかしているときは、時間の無駄以外の何者でもありません。知者と愚者を分けるのは、知識の多寡ではなく、自分が知らないこと、現時点ではわかり得ないこととそうでないものを峻別できるか否かにかかっています。そして、分からないことには素直に「分かりません」というのが誠実でまっとうな回答なのです。
 
情報は一所懸命収集してください。でも、情報には「中腰」で対峙しましょう。炭疽菌事件では、米国CDCが「過去のデータ」を参照して郵便局員に封をした郵便物から炭疽感染はない。いつもどおり仕事をしなさい」と言いました。それは間違いで、郵便局員の患者・死者がでてしまいました。未曾有の出来事では、過去のデータは参考になりますが、すがりつくほどの価値はありません。「最新の」情報の多くはガセネタです。ガセネタだったことにむかつくのではなく、こういうときはガセネタが出やすいものである、と腹をくくってしまうのが一番です。他者を変えるのと、自分が変わるのでは、後者が圧倒的にらくちんです。
 
自らの不安を否定する必要はありません。臆病なこともOKです。ぼくが北京で発熱患者を診療するとき、本当はこわくてこわくて嫌で嫌で仕方がありませんでした。危険に対してなんのためらいもなく飛び込んでいくのは、ノミが人を咬みに行くような蛮行で、それを「勇気」とは呼びません。勇気とは恐怖を認識しつつ、その恐怖に震えおののきながら、それでも歯を食いしばってリスクと対峙する態度を言います。従って勇気とは臆病者特有の属性で、リスクフリーの強者は、定義からして勇気を持ち得ません。
 
チームを大切にしてください。チーム医療とは、ただ集団で仕事をすることではありません。今の自分がチームの中でどのような立ち位置にあるのか考えてみてください。自分がチームに何が出来るか、考えてください。考えて分からなければ、チームリーダーに訊くのが大切です。自分が自分が、ではなく、チームのために自分がどこまで役に立てるか考えてください。タミフルをだれにどのくらい処方するかは、その施設でちゃんと決めておきましょう。「俺だけに適用されるルール」を作らないことがチーム医療では大切です。我を抑えて、チームのためにこころを尽くせば、チームのみんなもあなたのためにこころを尽くしてくれます。あなたに求められているのは、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続ける勇者になることではなく、適度に休養を取って「ぶったおれない」ことなのです。それをチームは望んでいるのです。
 
ぼくは、大切な研修医の皆さんが安全に確実に着実に、この問題を乗り越えてくれることを、こころから祈っています。
 
2009年4月28日 神戸大学感染症内科 岩田健太郎





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ね、勉強になったでしょう。
コメント
この記事へのコメント
勉強になりました
研修医のみならず 全ての人に通じるものがあると思います。現状を嘆くよりも 現状で何ができるか考えること 自分ができないことで焦ったり落ち込んだりするよりも 自分がチームのために出来ることを考えること などは医師でない私達にとっても心に響く言葉でした。
2009/05/02(土) 17:44:39
URL | あずき #-[ 編集 ]
本当に、医者の心得って文章です。

知らないことは、誰も知らない。
しかも、ガセネタも多い状況。

でも、誰かがしなければいけない。

この心意気は広めたいと思いました。
2009/05/03(日) 00:06:55
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
豚フルに限りませんね
どんな病にも、共通して言える話です。
更に言うなら研修医に限ったことではないし、医療ばかりでなくどんな仕事でも同じ。
基本が大切だし初動が重要。
うん、勉強になりますね。

慣れるとつい無意識に、手抜きしたり大ざっぱになりがちです(←猛省中)。
忙しいとか面倒とか鬱陶しいとか、何だかんだ言い訳をしちゃいますが、その手抜きが後に後悔を招く。
勿論医療なら、後悔どころじゃ済まなくなるでしょう。
こういう時こそ落ち着いて丁寧に。ですね。

いや~、しかし。地元神奈川県で感染者が!?と言われたら、流石に焦りました。
既存フルで幸いでしたが 、市長も知事も揃って危機感が薄く、幼稚な対応しか出来ないことを露呈してしまいました。
情けない~。

確かにマスコミは騒ぎ過ぎだと思います。
女芸人の結核も、やたら騒いだ割には忘れ去られていますが、感染症であることは同じですよね?
しかも死亡者はインフルより多い。
無駄に騒ぐくらいなら「くしゃみや咳をする時は必ず手を当てましょう」とか伝えて欲しいです。
最低限のマナーも出来ない輩が多いんですから。

話は変わりますが。
「癌性リンパ管症」って何なんでしょう?
忌野清志郎氏が亡くなって(ファンだから大ショック!)、咽頭癌が腸骨(?)に転移したのを聞いた時も「そんな遠くに移るの?」と意外でした。
なのに、一層耳慣れない病名で…。

機会があったら教えてください。
なんつーか、素人からすると本当に理解不能な病ですよねぇ、癌て。
癌のない世の中に、いつかなるといいんですが。
2009/05/04(月) 02:39:50
URL | 女王様 #-[ 編集 ]
そうですね。
どんなことにも通じることですね。

>最低限のマナー
これも確かに、大事です。
地道な啓蒙活動がよいのではないかと思います。

>癌性リンパ管症
主に肺内のリンパ管の中にがん細胞が詰まってリンパ管のまわりにむくみがおこり肺の酸素を交換する能力を著しく低下させます。
おそらくそれに伴う呼吸不全ではないでしょうか?

私も、清志郎好きで。。。

追悼エントリーもだしたいですね。
2009/05/04(月) 11:42:39
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
清志郎
お好きですか!
嬉しいです~(^^)
結構、嫌う人もいるんですよね。偏見というかなんというか。
メッセージ性が強過ぎて、食わず嫌いされちゃう。
確かに「イツミさん」て曲は、お医者様には抵抗あるでしょうが(笑)

本当は、とてもロマンチストで繊細でシャイな方なのに。
歌詞を読むと、すごく文芸センスがあって奥深いんですよ。
いくつになっても、まっすぐで不器用な少年のような感性の持ち主でしたね。

高校の保健室の先生に「落ち込んだなら、中島みゆきじゃなくてRCを聴きなさいよ。フルボリュームで!」と勧められたのがキッカケでした。
以来、どれだけ元気をもらったか。
まさかこんなに呆気ないとは…。 
復活祭行けば良かったなぁ。
もったいないし悔しいですね。

それにしても。
癌細胞が詰まったなんて、聞いてるだけでゾッとします。
これは肺転移ってことですか?
声を失う覚悟で、咽頭癌を切除してれば、もう少し生きていられたんでしょうか。

それを選ばなかったのが、清志郎らしいと言えばらしいけど。
歌えなくても生きてさえいてくれたら、と思っちゃいます。
本当に癌治療の選択って、難しいですね。
2009/05/05(火) 02:08:30
URL | 女王様 #-[ 編集 ]
肺転移ではないんですね。
肺にある陰は固まりの陰ではなくて細い線みたいな陰の集まりなんです。(リンパ管がむくんで太くなってCTなどでわかるようになる。)

>歌えなくても生きてさえいてくれたら、と思っちゃいます。

喉頭癌の抗がん剤と放射線治療の成績は悪くないです。
ですのであまり変わらないような気がします。


2009/05/05(火) 10:28:50
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
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