~よっしぃの独り言                   医者として10年程仕事をしてきました。 医療関係者と一般の方々の間に大きな隔たりがある事も実感しました。 これは、お互いにとって不幸なことです。 このすきまに橋を架けれたらと思いブログを始めました。
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2009/08/08 Sat 15:36
それから程なく、Bさんは身のおきどころのないしんどさが出てきました。

Bさんの家族を呼び出し話をしました。

『Bさんのしんどさを取り除くのは難しいです。

ただ、眠たくなるような薬を使うことによってしんどさから解放されると考えられます。

ただし、今まで通りのコミュニケーションはとれなくなりますけど。。。』

このようにセデーションの話をしました。

奥さんは、少し取り乱した感じでした。

『嫌です、わざと眠らせるなんて、わたしの生き甲斐がなくなります。』

『。。。。』

その翌日、奥さんから

『やっぱり、眠たくなる薬を使ってください。

わたしのわがままであの人がつらい思いをしているのですから。。。。』

このようなやりとりがあった後、セデーションを開始しました。

Bさんが眠りについた翌日、奥さんから話がしたいと連絡がありました。

『先生、眠たくなる薬を止めてください。』

『Bさん、またしんどくなりますよ。』

『あのまま、しゃべらないあの人は耐えられないんです。

それに、すぐにあの世に行くような気がして』

『ほんとうにいいんですね。』

『お願いします。』

確かに、Bさんに残された時間がそう長くはありません。

おそらく、1週間もないでしょう。

奥さんの希望通り、薬をやめることにしました。

また、呼吸状態が悪化したときに人工呼吸器をつけるかどうかの説明をしました。

『少しでも長く生きていて欲しいんです。

是非とも使ってください。』

何度か説明しましたが奥さんの意見はかわりませんでした。

薬を止めてしばらくするとBさんの意識ははっきりとしてきてつらくてつらくてたまらないようです。

奥さんもBさんがつらそうなのを見てつらくなってきたようです。

また、やってきて眠る薬を使ってください。とやってきました。

『わかりました。

また、使いましょう。

でもね、奥さん、何のために使うかよく考えてくださいね。

Bさんのためですからね。』

そして、Bさんは再び眠りにつきました。

しばらくして、病室から怒鳴り声が聞こえてきました。

声の主はBさんの息子さんです。

『母ちゃん、また眠る薬を止めて欲しいって、どういうことやねん!

ただの母ちゃんの自己満足やろ!

しんどいから、眠らせてもらってるんやろ!

もう、このまま様子を見ようや。』

そのあと奥さんは何も言わなくなりました。

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数日して、Bさんの呼吸が止まりそうになってきました。

『奥さん、人工呼吸器を使うのならそろそろやりましょう。

夕方を過ぎると看護師の数も少なくなるので今からつけた方がよいでしょう。』

奥さんは、目を腫らしながら

『先生、もういいんです。

わたしのわがままだったんです。

少しでも長いことそばにいて欲しかっただけなんです。

わたしは、あの人の事を考えていたわけではなかったんです。

こないだ、息子に怒鳴られるまで気がつきませんでした。

覚悟はできています。

ありがとうございました。』

それから、数時間して安らかに息を引き取りました。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

コメント
この記事へのコメント
最後には
自己満足であることに気がつくことが出来て良かったですね。

人間誰しも、少なかれ自己満足で生きている部分はありますがそれに気がつくのはなかなか難しいかもしれません。
2009/08/08(土) 20:36:20
URL | あずき #-[ 編集 ]
Don't ever go
私には奥様のお気持ちが痛いほどに解るのです…。
奥様には、よく頑張られましたねとお慰めしたい気持ちでいっぱいです。

まだ若い母と父を看取りましたが、どんなに尽くしてもbetterでしかなくbestではなかったと自分を責める…自責に逃げるのです。

今は元婚約者が闘病している側へ行きたいけれど周りにも彼自身にも止められ、“彼が余計に辛くなるのだから"と言われ、この奥様の様に堪えています。
そしてやがて聞く訃報にまた自責するのでしょう(/_・、)

先生のタイトルが自己満足?とquestionがついている意味、その深淵なる気遣いとお優しい眼差し、あらためてご尊敬申し上げます。
2009/08/09(日) 00:38:35
URL | エビ #XbnZBJT2[ 編集 ]
夫婦のことは・・・
当事者にしかわからない様々な想いがあるのでしょう。多分それは実の子でも理解出来ないのではないでしょうか。(傍から見ればただのわがままでも)

Bさんが苦しく辛い病から解放されてよかったです・・・。
2009/08/09(日) 09:57:36
URL | ダイヤモンドダスト★ #-[ 編集 ]
まるで自分のことのようで…
家人が末期がんの告知を受けた時、私はこの奥さんのようにシャカリキがんばっていました。なので、奥さんのアンビバレントな心情、想像できるような気がします。

で、私の場合、そこからよっしぃ先生のブログにたどり着き、末期がんの病態とか人生いろいろとか1年近く読み続け、自分の気持ちより家人の気持ちを優先しなくちゃと、気がつけたと思います。

というわけで、この頃に医療系ブログがあれば、この奥さんも少しは気持の整理がつけられたかも、、、と思ったりします。
現代人は「死」の存在から離れた感があるといわれていますから、こういった医療系ブログや人生いろいろは、それを埋めるツールになると思いますねぇ。。。
2009/08/09(日) 11:50:07
URL | christmas #-[ 編集 ]
>あずきさん
おそらく奥さんもいろいろと葛藤があって心が揺れ動いていたのでしょうね。

>エビさん

>どんなに尽くしてもbetterでしかなくbestではなかったと
そうですね。
例えbestでもbestかどうかはわからないのです。
あのとき、別のことをしていたらよかったと思うかも知れませんが別のことをしてよい結果となる補償もないのです。

>ダイヤモンドダストさん
医学的な状況と夫婦や家族の関係などが複雑に絡み合ってその患者さんにとってのよりよい方針となります。

このBさんの場合はこれでもよかったのかなぁと今になって思えます。

>christmasさん
christmasさんも最初は、そうだったのですか?
正直ビックリです。

>現代人は「死」の存在から離れた感があるといわれていますから、こういった医療系ブログや人生いろいろは、それを埋めるツールになると思いますねぇ。。。

そのように思ってくれる方がいるだけでうれしいです。m(_ _)m
2009/08/09(日) 13:05:46
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
…そう来ましたか~。
ちょっと意外な展開でした。

人間とペットを同列にしては不謹慎ですが、愛犬を悪性リンパ腫で看取った時の自分と重なりました。

ペットは人より経済的負担が大きいせいか、割とあっさり安楽死とか終末期を切り出されます。
治らないのはわかっている。でもなんとかしたい。
入院処置を頼みながら、やはり残り少ないんだから自宅で共に過ごしたいと撤回してました。

つらつら思うに、「生きている」ということは、そばにいて何らかのコミュニケーションが取れることなのではないかと。
話すことや、触れて体温を感じられること。
まばたきでもうなずきでもいいから、何かしらの反応があることに意味を持つのだと思います。

ということは。
どんな病であれ、延命措置は患者のためではなく、周囲の欲なのかも知れない。
エゴや身勝手というより、別れがたいっていう正直な気持ちですね。
今日終わるか明日終わるかわからない命と向き合う。
だから今、少しでも心を通わせたいんでしょう。

何にせよ、ある程度元気なうちに意思確認をしておくのが大切ですね。
納得し合ってないと、どのみち悔いが残りますから。
家族内でも「もういいよ」か「最後まで出来うる限り」なのかを統一しないと、もめる原因ですし…。

昔と違って、命の尊厳が認められるだけにややこしいですねー。
当たり前のようにICUに込めて、管だらけの機械任せという時代じゃないし、望まない人が増えましたから。
しかも「自分がそうなったら無理な延命はイヤだが、家族だと割り切れない」って人が多いから、一段と難しいですね。

諦めが肝心、て言葉がありますが。
父と愛犬を見送って「諦めること」がどれほど難しいかを痛感しました。
2009/08/11(火) 02:36:30
URL | 女王様 #-[ 編集 ]
意外でしたか?
喜んでいいのやら。

>つらつら思うに、「生きている」ということは、そばにいて何らかのコミュニケーションが取れることなのではないかと。
話すことや、触れて体温を感じられること。
まばたきでもうなずきでもいいから、何かしらの反応があることに意味を持つのだと思います。

薬で寝てもらっていても、うなずき程度のコミュニケーションがとれることはあります。(すべてがすべてでないですけど)

>延命措置は患者のためではなく、周囲の欲なのかも知れない。
いえいえ、患者さん自身の希望で行うこともあります。
患者さんの意向がわかれば、家族に伝えて家族の意見も本人と同じにしてもらうようにします。
同じにならなければ、家族の意向は無視したいと思っています。(そんなことなかったですけど。)

>「もういいよ」か「最後まで出来うる限り」
最後まで出来うる限りで、する方法があっても患者さんの状態によっては逆に命を縮めかねません。
だから、やめましょうと勧める場合があります。

>父と愛犬を見送って「諦めること」がどれほど難しいかを痛感しました。
本当にそうですね。
2009/08/11(火) 12:36:25
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
御夫婦でも
ご主人は最期まで奥様に本心を伝えず、奥様は最期までご主人の希望を聞く事もなく、夫婦って色んな形があるのですね。
息子さんはお父様とどのようなお話をされていたのでしょうね。。。

患者と主治医、信頼関係もなく上手くコミュニケーションをとれずに悩んでいる方もいれば、この方のように家族(奥様)にも話さない事を、医師にお話ししている事も多々ありますよね。
2009/08/13(木) 10:59:26
URL | ガーネット #0ll.HrS2[ 編集 ]
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