~よっしぃの独り言                   医者として10年程仕事をしてきました。 医療関係者と一般の方々の間に大きな隔たりがある事も実感しました。 これは、お互いにとって不幸なことです。 このすきまに橋を架けれたらと思いブログを始めました。
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2008/11/05 Wed 12:01
m3のブログに去年の8月26日にエントリーした記事です。




もう、ずいぶん前のことです。

Sさんが紹介されてきたのは、Sさんは、咳が続いたために近くの医院を受診し、胸部レントゲンで異常陰影を指摘されました。

検査の結果、脳、骨、肝に転移のある肺がんでした。
本人、家族に説明しようとしたのですが、家族と20年会っていない。
連絡先も知らない。別に今さら言わなくてもいい。どんな病気でもすべて自分で聞く。今まで好き勝手生きてきたから。との事。

Sさんに、無治療であれば平均余命3ヵ月から6ヵ月であること。
治療しても、再発する可能性が高く、1年前後であることが多い事。
効果、副作用、治療関連死の可能性など説明した上で治療を行いました。

そして、腫瘍の大きさはずいぶんと小さくなり退院を考える時期となりました。
そして、退院前にSさんとゆっくり話しをしました。

『Sさん、治療はうまくいって今がん自体は非常に小さくなった。このまま、再発しないかも知れないけれど、するかも知れない。
今はわからない。
再発して治療してもあんまり効果がなくなってしまって、残念ながらSさんの命をがんがおびやかすときがくるかも知れない。そのとき、Sさんの命を少しでも延ばそうとすると、口から管を入れて、人工呼吸器という器械をとりつけて、その器械から強制的に酸素を肺に送り込んだりとか、心臓マッサージをしたりとかしないとSさんの命がもたないときがくるかも知れない。』

Sさんは、真剣に話しを聞いてくれました。

『その時の、人工呼吸器とか、心臓マッサージは延命にしかならない可能性が高い。なぜなら、その時というのは肺がんが悪くなって今の医学ではコントロールできない状態だから。
Sさんのしんどい時間を延ばすだけの治療になる可能性が高い。』

Sさんは、しばらく黙っていました。そして、
『今は、調子ええんやけどな。いつか、そんなときはくるんやな。治らへんのやったらしんどい治療はいらんわ。』


それから、1年後Sさんは積極的な治療が出来ない状態となって入院してきました。

『Sさん、1年前退院する直前に話ししたこと覚えてる?』

『……うん。』

『1年前と気持ちは変わってない?』

『……そやな。』

しばらくして、Sさんはひとりで売店に行く元気もなくなってきました。

そして、私に聞いてきました。

『先生、もうあかんのか?死ぬんか?』

『Sさん、Sさんが本当の事を聞きたい?Sさんが本当に聞きたいんやったら、本当の事を言うわ。
でもな、Sさんにとって厳しいこと言わなあかんかも知れへんねん。』

『………ええわ。』

口には出しませんでしたが、Sさんは自分の残された時間が短いことを悟ったようです。

それから、2週間ほどしてSさんは苦しむことなくひっそりと息を引き取りました。



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身寄りのない方の対応はいつも考えされます。何がベストな対応だろうと。



Sさん、あの対応でよかったよね。
Sさんのご冥福をお祈り申し上げます。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

コメント
この記事へのコメント
何がベストか・・・
毎日のように訪問させてもらっておりますe-466
身寄りの無い方・・・。犯罪をおかした方・・・。様々な方をお見送りしてきました。
これで良かったのか。いつも脳裏に残ります。何がベストか・・・
その方が本当に望んでいる声を聞き出すこと・・・その希望に添えること・・・ができたら最高にベストなのかと思います。
希望に添える・・・は、治療だけではありません。
けど、それを叶えるには、時間もかかります。複雑に絡んだ糸を解くのは簡単ではありません。
医療従事者としてではなく、一人の人間としての対応が必要になってきます。
どこまで一緒に歩むことができるのか。
ラインをひかざるをえないのか・・・状況によって答えは変わると思います。

限られている時間も様々です。
でも、皆さん、わかっています。
自分の為に考えてくれている人がいる。
力になろうとしてくれている人がいる。

だから、それ以上、望んではいけない。と言い聞かせ、それを有り難いと受け取り、幸せだと思い込む。それしかない。
本音は最後まで持って、逝こう。
それが自分らしい。と思うから・・・。

そして、いつも感じていました。
悲しいけど、人は、最後の最後、亡くなった時にその人らしさがみえる。
本当に心苦しくなることもありましたが、その方が歩まれてきた道。
たどりついた果てにその人らしさが現れる。
否定してはいけない。
どんな方であろうと、最後まで生きなければならない。
一度、接し真実を知った者としての責任。
目を逸らさず、向き合う。

答えは色々あるのでしょう。一つではないとおもいます。

自分の中で葛藤しつつ成長させて頂き、その経験を次にいかしていく。
いかしていくことが、見送らせて頂いた方への恩返しでもあり、自分の中で、その人が生き続け、再びこの世で貢献することとなる。どんな方でも・・・。きっと・・・。
そう、思って今に至っています。



2008/11/05(水) 20:48:05
URL | ryo #qhVXTLRM[ 編集 ]
いろいろな体験をしてきていらっしゃたのですね。

私も、どこまで患者さんの立場に立つかで悩みます。
患者さんの希望と医学的な必要事項が一致しないことたくさんありますから。

その線引きが非常に難しいと感じて悩みながら仕事をしています。
2008/11/05(水) 21:46:25
URL | よっしぃ #-[ 編集 ]
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